ハワイには火の女神ペレが登場する伝説が多く残っているが、ペレが古代ハワイアンに塩の使い方を教えたという話もその一つだ。カウアイ島南部の街・ハナペペでは、ペレの伝説としても語られる古来伝承の製塩の営みを、次の世代へと受け継ぐ取り組みが続けられている。
昔々、若い女性がカウアイ島の海岸で漁をしたところ、あまりにたくさんの魚が獲れた。自分の家族だけでは食べきれず、海の幸が無駄になってしまうと女性は泣いた。 それを憐れに思ったペレは、女性を海の浅瀬に行かせた。浅瀬には白い水晶体が敷き詰められるようにしてあった。ペレは、水晶体をこすりつければ魚を保存することができると教えた――。 その白い水晶体がすなわちパアカイ(塩)であり、その場所がカウアイ島南部のハナペペだといわれている。 21世紀の今も、ハナペペには塩田が存在する。島の玄関口であるリフエ空港から、50号線を西へ約20マイル(32キロメートル)。現在ではアートタウンとして注目されるハナペペ・タウンを過ぎ、海側へハンドルを切ると、赤土がむき出しになった一帯が現れる。 そこでは、古くから伝わる塩づくりの技術と精神を、次の世代へと受け継ぐ試みが続いている。
ハワイアンソルトは土産物としても人気があり、観光客にもよく知れわたっている。ところが、現在でも天然の海塩を収穫しているのはハワイ諸島でも非常に珍しく、ハワイ島のプウホヌア・オ・ホナウナウとカウアイ島のハナペペの二カ所だけ。ペレの伝説でも語られる由緒ある土地・ハナペペで塩田での製塩文化の継承に取り組んでいる家族は、今では10を数える程度にまで減った。フランク・サントス一家は、そんな数少ない家族の一つだ。