フランクの娘クーレイは、幼い頃から毎年、塩田での作業を手伝ってきた。今では収穫時期になると自身の子ども二人を連れて、親子三代で製塩作業に励む。 製塩のプロセスはこうだ。まずはハワイ語でプナバイと呼ばれる井戸を掘る。ハナペペの塩田は海に近く、掘った地層の間から海水がしみ出してくるのだ。その水をすくって、黒っぽいシートが敷かれたプール(=ワイクー)に汲み上げる。 強烈な太陽光にさらされ水温が上昇した海水は、粘土で周りを囲った小さなプール(=プネ)に移され、水分が蒸発するとともに濃縮されていく。やがて水面近くで結晶化した塩が沈殿し、それを網で収穫するというわけだ。 収穫時期は雨の少ない夏に限られる。ピークは7月。井戸を掘るところから最初の収穫までに約5週間かかる。その後は1~2週おきのペースで親族一同が塩田に集まり、収穫を行う。作業は朝7時から始める。日が昇るにつれ気温は上昇。炎天下での作業は、決して易しくはない。
収穫した塩は販売するわけではない。サントス家の面々は、皆それぞれ定職を持っている。彼らにとって塩づくりはビジネスではないのだ。自分たち家族が使う分だけを、海と大地からの恵みとしていただく。 「暑くて苦しいけど、そんな中でも汗をかきながら労働してはじめてハーベスト(収穫)が得られる。それを家族みんなで行うんです。私も自分の子どもたちには、塩づくりを通じてそういうスピリットを学んでほしいと思っています」 大自然に対して謙虚な姿勢で臨み、その恵みに感謝する精神。娘クーレイが父フランクから受け継いだのは、“塩の製法”だけではない。
PHOTO:George Russell